2023年10月、シンガポールの住宅事情【公営住宅・HDB編】
シンガポールで起業・移住を考える方にとって、まず知っておきたいことが、生活の基盤となる住宅事情ではないでしょうか?
シンガポールの主な住宅のタイプには、HDB(政府機関の住宅開発庁が供給する公共住宅/Housing Development Board)、コンドミニアム、土地付きの一戸建て、サービスアパートメントがあります。HDBの購入は、シンガポール人または永住権を持つ外国人のみに限られます。
日本人駐在員や起業家の多くはコンドミニアムに暮らしていますが、HDBとの違いを理解していると家探しがスムーズに進みますので、まずはHDBについてお伝えします。
シンガポール国民のための住宅システム「HDB」
シンガポールを象徴する景観のひとつ、HDB団地群。HDBは、シンガポール政府機関の住宅開発庁(HDB: Housing & Development Board)によって開発や供給を管理されている集合団地のことを指します。
HDBとは、シンガポール政府が“すべてのシンガポール人が、必ず住宅を持つ”ことを掲げ、施された制度のひとつ(実際は99年リース)。シンガポール人の約85%が住んでいます。購入する際には、所得、年齢、婚姻の有無、居住期間などによってさまざまなルールがあり、HDBが写り込む風景は、シンガポールのひとつのシンボルとなっています。
HDBの特徴は、建物、部屋の作りがシンプルであること。共用部やセキュリティはなく、スイミングプールやジムがありません。またユニット自体にバルコニーがない住宅が多いのが特徴で、現在も窓から棒を出して洗濯物を干している住居を見かけます。中心部には少なく郊外に多いですが、駅やバス停からは近く、便利なことが多いです。
街中には築年数が古いHDBもたくさんありますが、内部は個性豊かにリノベーションされ、家庭内でそれぞれの自由なライフスタイルを楽しむ方が多く見られます。
多民族国家であるシンガポールでは、HDB団地の入居者の比率が国民全体の民族比率と同程度になるよう配慮され、団地の共有スペースやコミュニティ・センター(公民館)では、イベントが開催されるなど、住民間の交流も後押しされているようです。
中心部の高層HDBも!ナショナルデーの国旗も見どころ
ちなみにこちら、2009年に完成したHDB「ピナクル @ ダクストン(The Pinnacle @ Duxton)」は、シンガポールのダウンタウン地区に位置する7棟の50階建て。(159m/50階が屋上)。公共住宅の中では世界一高い高層住宅です。価格も高額で、部屋の広さにもよりますが、購入には日本円で1億円以上はかかります!
50階のスカイ・ブリッジは一般開放され、シンガポールの素晴らしい眺望を楽しむことができます。(入場料$ 5)
綿密な都市計画に基づいて建てられたHDB団地は、シンガポール発展の歴史を語る上で欠かせない存在でもあります。毎年8月9日のナショナルデーの頃は街中のHDBでバルコニーや通路に規則正しく旗が掲げられているのを目にします。
シンガポール観光時や滞在時にはぜひ、HDBの住宅を通してシンガポールのローカルを感じてみてはいかがでしょうか?
シンガポール事務所/石原有起